顎関節症
「顎がカクカク、コキコキと音が鳴る」
「口を開けようとすると耳の前が痛む」
「大きく口を開けられない(開口障害)」
「頭痛や肩こりが慢性的に続く」
食事のとき、会話のとき、ふとした瞬間にこうした症状に心当たりのある方は、顎関節症(がくかんせつしょう)かもしれません。
顎関節症は、顎の関節(顎関節)やその周囲の筋肉に異常が生じる病気です。
顎の不調は、日常生活の「当たり前」を奪ってしまいます。
硬いものが噛めない、大きく笑えない、人前で音が鳴るのが恥ずかしい—患者さまが抱えるこれらの悩みに、私たちは深く共感し、向き合います。
顎関節症の原因は、噛み合わせ、ストレス、生活習慣、姿勢など、非常に複雑で多岐にわたります。
そのため、単に痛み止めを飲むだけの対症療法ではなく、多角的な視点から根本的な原因にアプローチする治療が不可欠です。
当院では、マウスピース治療をはじめ、行動認知療法やセルフケアとしてのストレッチ指導など、患者さま一人ひとりの症状とライフスタイルに合わせたオーダーメイドの治療プログラムをご提案いたします。
顎関節症とは?—その症状と複雑な原因
顎関節症は、放置すると症状が悪化し、慢性的な頭痛や不定愁訴(原因不明の体の不調)につながることもあります。
まずは、ご自身の症状を正しく理解することから始めましょう。
主な症状(DSM-TMDによる分類)
顎関節症の主な症状は、大きく以下の3つに分けられます。
① 痛み(咀嚼筋痛・顎関節痛)
顎を動かす筋肉(頬やこめかみなど)や、耳の穴のすぐ前にある顎関節そのものに痛みを感じます。
特に、食事中や会話中に顎を使った際に強くなります。
② 異音(クリック音、クレピタス音)
口を開けたり閉じたりする際に、「カクカク」「コキッ」といったクリック音や、「ジャリジャリ」「ギシギシ」といった関節の摩擦音(クレピタス音)が鳴ります。
これは、関節の中にあるクッション材(関節円板)がズレたり、すり減ったりしているサインです。
③ 開口障害(口が開かない)
顎関節の動きが制限され、口を大きく開けられなくなります。
通常、指を縦に3本入る程度(約40mm)開けられますが、それ以下しか開けられない場合、日常生活にも大きな支障をきたします。
顎関節症を引き起こす多岐にわたる原因
顎関節症は、特定の単一の原因で発症することは稀で、複数の要因が複雑に絡み合って生じることがほとんどです。
T:Tension(緊張・ストレス)
精神的なストレスや緊張が、無意識の歯ぎしりや食いしばりを引き起こし、顎の筋肉に過度な負担をかけます。
O:Occlusion(噛み合わせ)
不安定な噛み合わせ(歯の欠損、不適切な被せ物など)が顎関節に負担を集中させることがあります。
P:Posture(姿勢・生活習慣)
猫背や頬杖、片側だけで噛む癖、うつぶせ寝など、姿勢の悪さが顎関節のバランスを崩す原因になります。
J:Joint(関節の構造)
関節円板のズレや変形など、顎関節そのものの構造的な問題。
当院では、問診と精密な診査により、患者さまの症状の根本に潜む原因を特定し、治療方針を立てます。
当院が実践する多角的な顎関節症治療
台原みなも歯科クリニックの顎関節症治療は、低侵襲で可逆的な治療(後戻りが可能な治療)から開始し、患者さまご自身が症状をコントロールできるようになることを最終目標としています。
【治療の核】マウスピース(スプリント)療法
マウスピース(スプリント)療法は、顎関節症の治療において最も一般的で効果的な方法の一つです。
マウスピースを装着することで、噛み合わせのバランスを一時的に整え、顎や首周りの筋肉の過度な緊張を緩和します。
歯ぎしりや食いしばりによる強い力が顎関節に直接かかるのを防ぎ、関節円板や関節への負担を軽減します。
ズレた顎関節を正しい位置へ誘導する役割を果たし、痛みの緩和や開口量の改善を目指します。
当院でのマウスピース製作と調整
当院では、患者さまの症状に合わせて最適な形状のマウスピースを精密に製作します。
症状や目的(筋肉の緊張緩和、関節の安定化)に合わせて、柔らかいソフトタイプか、硬いハードタイプを選択します。
また、マウスピースは、作って終わりではありません。
装着後も定期的にご来院いただき、噛み合わせや顎の動きに合わせて細かく調整を行います。
この調整を繰り返すことで、顎が本来あるべき楽な位置に戻るようサポートします。
【セルフケア】行動認知療法と意識づけ(リンク法)
顎関節症の大きな原因の一つが、無意識のうちに行っている「悪習癖(あくしゅうへき)」です。
歯ぎしりや食いしばり、頬杖などは、意識しなければ止められません。
行動認知療法(リンク法)は、患者さま自身がこれらの悪習癖を認識し、改善していくための精神的・行動的なアプローチです。
顎関節症の改善には、下記のような「意識を変える」セルフケアが、マウスピースと並んで非常に重要です。
悪習癖の認識
まずはどのような状況(緊張、集中、睡眠中)で無意識に食いしばっているかを自覚していただきます。
普段、食事や会話時以外に上下の歯が接触している状態(TCH)は、顎の筋肉を疲労させる大きな原因です。
歯は安静時にはわずかに離れているのが正常です。
意識づけ(リンク法)の実践
張り紙やアラームを活用します。
具体的には、デスクや冷蔵庫、パソコンなど目につく場所に「歯を離す」「力を抜く」といったメモを貼り、無意識の行動を意識的に中断する習慣をつけていただきます。
顎の筋肉だけでなく、全身の緊張を緩めるリラックス法を指導します。
【物理療法】顎と周辺筋肉のストレッチ指導
顎関節症の痛みや開口障害には、顎周りの筋肉が緊張して硬くなっていることが大きく関わっています。
適切なストレッチやマッサージは、筋肉をほぐし、顎関節の動きを改善するために有効です。
顎関節の可動域訓練
痛みのない範囲で、少しずつ口を開ける練習を指導します。
顎の動きを鏡で確認しながら、左右対称に動かす訓練を行います。
咀嚼筋・関連筋のマッサージ
こめかみ(側頭筋)や頬(咬筋)など、緊張している筋肉を優しくマッサージする方法を指導します。
また、顎の筋肉は首や肩の筋肉と連動しています。
これらの関連筋をほぐすストレッチも併せて指導することで、頭痛や肩こりの軽減も目指します。
顎関節症治療の長期的な見通しと再発予防
顎関節症は、生活習慣病の側面が強いため、即効性のある治療は難しいことをご理解いただく必要があります。
症状の改善には数ヵ月単位の時間がかかり、患者さまと歯科医院が協力し合う長期的な取り組みが不可欠です。
治癒までのプロセス
急性期の症状緩和
まずはマウスピースや鎮痛剤などで、強い痛みや炎症といった急性症状の緩和を最優先します。
原因の除去と習慣の改善
マウスピースの調整と行動認知療法を並行し、顎関節に負担をかけている根本的な原因(悪習癖)を改善します。
噛み合わせの再構築(必要な場合)
マウスピースで顎が安定し、症状が改善した後、不安定な噛み合わせが原因と特定された場合は、被せ物の調整や矯正治療など、最終的な噛み合わせの安定化を検討します。
再発予防のためのメンテナンス
顎関節症は再発しやすい病気です。
症状が治まった後も、定期的な経過観察が重要となります。
マウスピースのチェック
摩耗や変形がないかチェックします。
TCHの再確認
悪習癖が再発していないか、定期的に意識づけを行います。
噛み合わせの微調整
歯がすり減ったり、歯周病で揺れたりすることで噛み合わせが変わっていないかを確認します。
まとめ:台原みなも歯科クリニックが提供する顎関節症治療
顎関節症は、患者さまの心と体に大きな負担をかける疾患です。
「もう治らない」と諦めている方もいらっしゃるかもしれませんが、適切な診断と多角的な治療で、必ず症状は改善に向かいます。
顎の不調にお悩みの方は、まずはお気軽に当院にご相談ください。
私たちは、皆さまが心からの笑顔を取り戻し、美味しい食事を楽しめるようになるまで、全力でサポートいたします。

